【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
理解が追い付かなかった。かおるちゃんに何て話そう。そんな事ばかりが頭を巡る。
都内を一望出来るスイートルーム。宝石箱をひっくり返したような、美しい光りたち。
大きな窓に手を付けて目の前に広がる夜景に夢中になる、と。
「風呂が沸いた」
そうぶっきらぼうな声を出す樹くんが、上着を脱いでネクタイを緩める。
「あの……どうぞ、ゆっくり浸かって下さいな。お仕事終わりお疲れでしょうし…。」
「どうして君はこういう時だけ……」
そこまで言いかけると、唇を噛みしめて彼は私の手を再び強く引っ張った。
あれよこれよとバスルームまで連れて来られて、樹くんは洋服を脱ぎだしてしまった。
「ぎょぉ!」
思わず両手で目を隠すけれど、隙間から丸見えの一切無駄な肉などない樹くんの裸体。
「君も、脱げ」
「何で?!」
「この間お風呂で背中を流してくれると言ったじゃないか」
だってこの前まで私の言葉なんて水のようにさらりと流していた癖に。
何でいきなりこんなに強引に。
「自分で脱げないと言うなら、俺が脱がせてやろうか」
「だだだだ大丈夫ですッ、自分で脱げますので!」
着ていた洋服を脱いで、先にお湯に浸かる樹くんの元へと行く。