【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
向日葵の為、陽向の為、家族の為に必死で働いて来た。
その結果、家庭を疎かにした。 向日葵の余命は後1年。一緒に過ごせる時間は、思ったよりも少ない。
小鳥遊さんが思っているよりも、時間は少ないと思ってください。と医師にはっきりと告げられた。
それから向日葵の闘病生活は始まった。 それは、思っていたよりも過酷な物だった。 膵臓癌は気が付いた時には既にステージ4になっていてもおかしくない程気が付きにくい病気で、そこからはあっという間に命を奪っていく。
腫瘍の場所が悪く、手術は出来ない状態にあるという事。抗がん剤が合うかどうか分からないという事。悪戯に向日葵を苦しめてしまうだけの治療になってしまう可能性が高い事。
それでも諦めたくなかった。
名医と言われる医者が居る病院は何件も回ったし、治療に効きそうな薬があるならば認可が下りていなくとも幾らでも支払うつもりだった。
死んでほしくない。 どうか俺の前から居なくならないでくれ。 あの1年は、とてもゆっくりと流れた。 向日葵と陽向と過ごす時間が増えて、どうして俺はこの時間を今まで大切にしてこなかったと、悔やんでも悔やみきれなかった。
どんな痛みに襲われようと辛い治療の最中でも向日葵は愚痴を一切こぼさなかった。
日に日に痩せていく体。 繰り返し、何度だって俺へと感謝の言葉のみを口にするのだ。