【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

「でもぉ…私は貧乏なんですよぉ。
掛け持ちをして仕事をしなきゃあ家賃さえも払えないんですッ」

「それならば俺の家で暮らせばいいじゃないか」

暮らせばって…そんな簡単な。それはとても光栄で嬉しい事だけど
今みたいに通いで行くのは構わない。それならば、チビひなただって不審には思わない筈。

でも私があの家に住み着いてしまったら、勘の良いあの子の事だから色々と勘付いてしまうだろう。

私は怖かった。樹くんと付き合えるのはすごく嬉しいけれど、チビひなたの反応が怖かった。だってあの子は大人の顔色を伺って、寂しい時や悲しい時に泣く術を知らない子供なのだ。

「それは困ります…」

「じゃあうちの社員になるか?」

「樹くんの会社に入社したって、私ITには詳しくないし何も出来ません。
それに夏村さんがいるし」

「夏村?彼女が何か?」

だってあの人絶対に樹くんが好きじゃんかよ。 まさかこんなぽっと出の意味の分かんない女が、樹くんの彼女の座を射止めたなんて知ったら絶対に悲しむに違いない。

「いえいえ別に~
それより早くチビひなたを迎えに行きましょう!
樹くんのお父様もいらっしゃるんですよね?初めて会うから緊張しちゃう!」

「いや…緊張する程の事でもないと思うが…
だって親父は…」

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