【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「私、お母さんにはなれない…」
正直な言葉を口にすると、かおるちゃんは無言のまま頷く。
「誰だってそうなんじゃん?ひなたの考える事が普通なんじゃん?
子連れの人と付き合うってすごく大変だと思う。 私だったら絶対に御免だけど」
「そうだよね、普通そうなんだよね。 でも私さ、樹くんが好きで大切なようにあの子も好きなんだ」
「そりゃあ小鳥遊さんの子供だからでしょう?」
「樹くんの子供だからって訳じゃないと思う。
私、あの子個人で好きなんだと思う。だから余計に困っちゃう…。
私…ずっと樹くんの事が好きだったから付き合えるようになって幸せで、その幸せだけを噛みしめていきたいのに…
どうしてもあの子の事ばかり考えちゃって…」
「あんたは本当に馬鹿ね。自分の幸せの事だけ考えていればいいのに…」
サンドイッチと一緒に注文したメロンソーダーの気泡がグラスの中浮かび上がる。
鮮やかな緑の海を真っ赤なサクランボがぷかぷかと泳いでいる。 グラス越しのかおるちゃんは切なそうに眉を下げて、笑っていた。