【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「え……でも…会社にはまだ社員の方たちがいるのでは…」
「大丈夫。君を通すように伝えておく。
いいだろう?たまには、君に気持ちを伝えてから陽向に君を取られっぱなしだ。
俺だって…たまには甘えたい」
何て可愛らしい人だろう。 ずっと大人だと思っていた。私よりもうんと年上だし
けれど付き合い始めてから樹くんは前よりずっとずっと甘くなった。
タイムカードを切って直ぐに向かいます!と言ったはいいものの、会社には夏村さんも…居るかなぁ?
居るのであればそれは気まずい。 どうか居ませんように。けれどもその願い空しくオフィスに足を踏み入れた瞬間彼女に会う羽目になってしまうのであった。
「小鳥遊社長から伝言はお預かりしています、どうぞ社長室へ~。社長は少しばかり打ち合わせをしておりますので、お待ちくださいとの事です」
若い女性社員が私の対応をしてくれるのかと思いきや、今日も黒のパンツスーツに身を包む夏村さんがそれを制止した。
「彼女は、私が」
「あ!夏村さん。先ほど一色さんが探しておられましたが~」
「ええ、いいの。大丈夫。
永瀬さん、こちらへどうぞ」
コツンコツンとパンプスのヒールを鳴らし、作り笑顔。 その美しい笑顔が何故かとても恐ろしい。