【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「うるさい。別に胸のデカさだけで君を好きになった訳ではない。」
「本当ですか~?怪しい所ですね~。大体この胸のせいで昔っから体目当ての男が沢山寄ってきて!」
「俺をそんな下らん男と一緒にするな。
君は自分が思っている以上に魅力的な女性だ。」
「もぉ~…口が巧いんだからぁ…」
「君こそ、俺のどこかそんなに好きなんだ」
「顔!!」
呆れたように、顔を見合わせた樹くんがため息をつく。
「顔だけど、顔だけじゃなくって…。とても優しい所が好きです。
チビひなたを大切にしている所はもっと好きですが!」
ふっと小さく笑い、私を抱きかかえた樹くんは鼻と鼻をくっつける。
どうしよう。元々大好きだったけれど、知って行くうちにもっともっと好きになっちゃう。…こんな気持ち止められないよ。
「俺も、君の優しい所も陽向を大切にしてくれる所も全部好きだ」
ぎゅっと樹くんの背中にしがみつく。
すると私から視線を背けた樹くんがバッと体を引き離す。
焦ったように向けた視線は、リビングのドアへと向いていた。 嫌な予感がする。
ゆっくりと振り返ると、そこにはチビひなたが立っていた。
「…どういう事?何やってんの…」
唇を噛みしめて、こちらを睨みつけるその瞳はどこかで既視感。
そうだ、それは夏村さんが私を見つめる瞳と同じだった。
私をまるで憎らしいものでも見るような、どこまでも冷たい冷たい瞳。
この日が来るのが、何よりも怖かった――。