【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

「ここのラーメンは最高だ。さすが君が食べログを調べ尽くしただけの事はある!」

隣でラーメンをすする樹くん。小汚いラーメン屋さんはブランド物のスーツを着こなしている彼には、余り似合わない。どこか違和感がある。

私と並ぶ彼も、周りから見れば違和感だらけなのではないか?今まで元気だけが取り柄で、物事をポジティブに考えるのだけは得意だったのに元気が全然出ない。

大好きな樹くんと一緒に居ても、考えることはチビひなたの事ばかり。
これじゃあ、誰と恋愛しているのか分かったもんじゃない。

けれど、樹くんと過ごす日々の中でチビひなたの姿はいつでも隣に合って、気が付けば無邪気な笑顔を向けてくれるあの子が大好きになっていたの。


樹くんの子供だからじゃないの。
優しくしていたのは、あなたが樹くんの子供だけだからじゃなかったの。
初めは樹くんに近づきたいだけだった。でも今は、違う。


「おい、」

「うぅ……」

「折角味噌ラーメンを頼んだのに泣いてばかり居たら塩ラーメンになっちまうぞ…」

ラーメンの器にぽつりぽつり涙が零れ落ちていく。

樹くんがティッシュで頬を流れていく涙を拭ってくれる。けれど全然止まりそうにない。これじゃあ本当に塩ラーメンになってしまうかもしれない。

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