【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
社長室に入り、ソファーに腰をおろす。
夏村ともきちんと話をしなくてはいけないか…。 そう思いながら、仕事の書類に目を落としているとドアをノックして夏村が入って来た。その手には花瓶が大切そうに抱えられている。
「あぁ、ありがとう」
「いえ、冬でも向日葵が咲くなんて不思議な気分ね」
そう言いながら、窓際のいつもの場所に花瓶をそっと置く。
大きな窓からは太陽の光が入って、花瓶に生けられた向日葵は太陽に向かって燦燦と輝きだした。
花びらを触りながら、夏村が口を開く。
「私はずっと樹は向日葵を忘れずに生きて行くのかと思っていた。
だってこの部屋の向日葵の花を枯れた日を私は見た事がないんですもの」
こちらを向いた彼女は、真っ直ぐと俺を見つめていた。 こうやって、ずっとずっと見つめてくれていたのか。そんな事にも気づいてやれなかった。
俺は…いかに今まで自分へ好意を向けてくれる人間の気持ちを蔑ろにしてきたかって事か。 でも、ひなた。君に会って俺は変わった。 俺を変えてくれたのは、やっぱり君だったんだ。
「ずっとそのつもりだった…。それが向日葵へ対する贖罪だと思っていた」