【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

本当は大好きだったのに、お父さんと仲良くしているのを知って面白くない気持ちになっただけなんだ。

少しだけ困らせたくて、我儘を言ってみた。悲しい気持ち寂しい気持ちでいっぱいになって、お母さんに会いたいなんて泣いてしまった。

デカひなたは悪くないのに、あんなに悲しい顔をするなんて思わなかったんだ。


だから僕を庇って、道路に倒れ込むデカひなたを見て
あの日を思い出した。 あの日の事は小さかったけれど、よく覚えている。

おじいちゃんに病院に連れて行って貰ったら、お母さん側のおじいちゃんとおばあちゃんも来ていた。

二人は遠くの街に住んでいるから、皆が揃うのはすごく珍しくてすっごく嬉しかったのを覚えている。


けれど病室の雰囲気はいつもと違って、お医者さんや看護師さんがバタバタと動き回って

「最後の時間を家族で過ごしてください」とおばあちゃんに言った時、おばあちゃんは泣き崩れてしまって、それを支えるようにおじいちゃんが何かを言っていた。


皆が久しぶりに揃って嬉しい気持ちになったのに、少しずつ不安な気持ちになっていって

僕の手をぎゅっと握りしめたおじいちゃんはいつものようにおどけていなくて、真剣な顔をして僕の肩を両手で掴んで「お母さんにお別れしような」と言った。

おじいちゃんの手は小刻みに震えていた。

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