【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

お母さんが死んでしまって、忙しいと余り家に居なかったお父さんが毎日僕の隣に居てくれた。
お母さんは二度と目を開けることはなく、笑ってくれなかった。

体も冷たくなってしまって、真っ白の顔。何度も呼び掛けても、もう僕に何かを問いかけることは無くなった。

お父さんは僕の前では1回も泣かなかった。 「陽向」と僕の名前を呼んで、泣きじゃくって息も上手く吸えなくなった僕を強く抱きしめた。いつまでも泣いている僕を見て、お父さんは困った顔をした。


お葬式には沢山の人が来てくれていた。
お母さんの笑顔の写真。 それを囲むように沢山のお花が飾られていた。

でも夜になるにつれて人は段々居なくなっていって、その日の夜はお父さんが一緒に眠ってくれた。 お父さんと眠るのは初めてだった。

けれど夜中に目を覚ますと隣にお父さんは居なくって、リビングをそっと覗いて見ると大きなお父さんの背中が暗闇の中とても小さく見えた。

お母さんの写真を手に取って、泣いていた。 「向日葵…」と何度も呟きながら、背中が震えていた。

その日を境に僕は余り泣かなくなった。 お父さんを守らなくちゃ。 お母さんはもう居なくなってしまったけれど、お父さんまで病気になったらいつでも治せるように僕はお医者さんになる。

お父さんの泣いた所を見た事がなかったから、お父さんは泣かないものだとばかり思っていたんだ。 でもあの日初めてお父さんの涙を見て、泣かないと決めたんだ。

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