【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「樹、お医者さんに話を聞いてきて。
陽向くん、ちょっとお姉ちゃんと一緒にいよう?
あっちにいって、ジュース買ってあげるから」
お父さんと一緒にやって来たのは、お父さんの会社の夏村さんと一色さんだった。
昔からの知り合いで何度も遊んでくれた。
「嫌だッ…!お父さんと一緒にいる」
「陽向くん、お父さんはお医者さんの話も聞かなくちゃいけないからね?
僕とお姉さんと一緒に少しだけあっちに行こう」
「嫌だってば!」
夏村さんの手を振り払って、病院のロビーで揉めていると
「何やってるんですか?!」と聞き慣れた声が飛び込んできた。
看護師さんに付き添われて、車椅子に乗ってけろりとした顔をしてこちらにやって来たのはデカひなただった。
腕や足は包帯でぐるぐるに巻かれていてけれどいつもと変わらない元気いっぱいの笑顔をこちらへ向けた。
デカひなた…そう名前を呼ぼうとしたら、隣に居たお父さんの腰が抜けてその場にぺたりと尻もちをついて動けなくなってしまった。
そのお父さんの横顔にはほんのりと涙があった。直ぐに立ち上がったかと思えば、車椅子に座るデカひなたの所に行って、ぎゅっと抱きしめた。
さっき僕を抱きしめたように、強く強く――。