【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「デカひなた一緒にお風呂入ろう」
ぎゅっと私の手を握るその手は余りにも小さく弱々しい。
柔らかくて、こんなに守りたい命がこの世にあるのかと思う程。
…でも、私はこの手を離さなくてはいけない。この子を守るために。
「チビひなた、今日は一人でお風呂に入れる?
私、お父さんとちょっとお話したい事があるんだ」
「えぇー?嫌だよぉ。一緒がいい…」
「お風呂から上がったらケーキがあるよ?!」
「んー…分かった。じゃあ直ぐに入って来る!」
「ゆっくりとお湯に浸かるんだよ?!寒いんだから、風邪ひいちゃう!」
私の話なんて聞かずに、ぴゅーっと走り去ってしまった小さな背中は頼りなくやっぱり愛しい。
目の前で優しく微笑む樹くんと親子。よく似ている。だから私はもっと切なくなってしまうんだ。
「改めて、ありがとう」
「もうその言葉は聞き飽きたよー。それに二人とも何ともなかったという事で結果オーライ的な。
寧ろこんな高級寿司までご馳走になっちゃってラッキーだよん!」
「クリスマスも3人で過ごそう」
ちくりと痛む心。樹くんが優しければ、優しい程、この恋はもっと切なくなる。
私はもう、あの子から何一つ奪うことなく、生きて行きたい。
私樹くんを好きになった事は後悔していない。チビひなたに出会えた事も幸福だ。 でも怖かった。あの子の泣き顔はもう見たくない。