【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
それでも気持ちはハッピーだ。今日一目でも会えたら運の良い日だし、会えなかったら会えなかったでそれは次までの楽しみが増えるだけの事。
ふーんふーんと鼻歌を歌いながら、足をぶらぶらとさせていると、「フー」と大きなため息が聴こえて来た。
携帯を手に持ったまま横を向くと、私と同じように花壇の石段に腰を降ろす小さな子供とばちりと目が合った。
その手には、私とお揃いのスマホが握られていた。
げっ。近頃の子供は携帯を持っているのか。目が合いにこりと微笑むと、直ぐにふいっと目を逸らされてしまった。
歳は6、7歳位だろうか…?灰色のブレザーに紺色のネクタイ。チェックの半ズボン。そして黒のベレー帽を被っている。
私の生まれた田舎ではありえない事なのだが、都会の小学生というのはキチっとした制服を着こなして友人同士電車に乗っている事がある。
一度だけ遭遇した小学生であろう子供たちは、電車に降りる時に友人に向かって「御機嫌よう」と挨拶をしていたのを見て驚かされた事がある。
育ちの良い子供。難関小学校のお受験を突破してきた子供。
少し離れた場所に座っていたその男の子も気品のある顔をしていて、子供にしてはやけに顔の造りがしっかりとしていて男前でかなり可愛い顔立ちをしていた。
しかし何故にこんな時間に、こんなオフィス街を幼い子供一人で居るのかがいささか疑問なのだが…?
お節介なのは生まれ持った性分なのだと思う。
少年へとスーッと近寄って行って隣に座る。