【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「ねぇ、僕こんな所で何しているの?」
私が声を掛けると、少年は顔を上げて私を見つめ明らかに不信感を見せた。
おぉ。何という顔の整っている子供だ。こんな可愛い子がこんな夜にぶらぶらしていたら怪しい人に誘拐されかねませんよ~?
けれど少年はまるで私を怪しい物でも見るかのように、再び距離を開けた。
「お母さんは?」
そう訊ねると、少年は眉間に皺を寄せて迷惑そうにこちらを向いた。
「うるさい」
は?
冷たく言い放たれた高音のソプラノの透き通った声に、苛立ちを覚える。
私は元々子供は苦手だ。何を考えているのか分からなくて、生意気で、そのくせ子供だという理由だけで大抵の事は許されてしまう。
確かに突然話をかけた派手なねーちゃんは、子供の目から見たら不審者に見えてしまうかもしれないけれど「うるさい」はないだろが。
ぷいっと顔を背けて、少年は斜め掛けバックに携帯をしまったかと思えば中から本を取り出し私を無視したまま読み出す。
ちらりと盗み見をすると、そこにはズラーと漢字の並んでいる小難しそうな本。
…この子、6歳か7歳位だよね?今日日の子供はこんな難しそうな本を読むものなのだろうか?