【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
小さな声でそう言った少年はさっきまでの生意気な顔とは違い、ただの子供らしい子供の顔になっていた。
緑色のドロップを取り出し、少年に渡すと嬉しそうに口の中に放り投げた。
何だ、笑えるんじゃん。
ふーんふーんと鼻歌を歌いながらドロップを舐めていると、少年の方から口を開いた。
「お前、ここで働いているのか?」
お前って…。まぁいいんだけどさ。
「そうだよ!ここのビルを綺麗にするお仕事をしてるんだよ」
「ふーん。お前が掃除しても綺麗にならなそ」
やっぱりクソ生意気。
しかし次に彼は大きな目をキラキラと輝かせて、オフィスビルを指さす。
「僕のお父さんはここでお仕事をしているんだ!」
「そうなの?!じゃあお父さんを待っているの?」
「まあね。家で待ってろって言われてるんだけどさ…。」
「そりゃあ待ってろって言うよ~。こんな小さな子供が夜に出歩いていたらお父さんだって心配しちゃうよ?」
「でも今日からおじいちゃんは旅行に行っちゃったし、家には一人だし…」
「要するに寂しいのね?」
くすりと笑うと、少年は顔を真っ赤にして「寂しくない!子供扱いをするな!」と言った。
まだまだ子供じゃないか。親を恋しがって寂しくなるのは当たり前だ。そう考えれば生意気な子供であっても可愛いものは、可愛い。