【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

「お姉ちゃんも君と同じ位の時に両親を事故で亡くしてるの。
でも絶対に大丈夫だよ?君にはお父さんも居るし、絶対にこの世界でひとりぼっちなんて事はないんだからね?」

その言葉に、少年は黙り込んで何かを考え込んだ表情を見せた。

私は4歳の頃、両親を事故で亡くしている。 幼かった頃でよく憶えてはいない。けれどあれは3人で行った旅行先で

見通しの悪いカーブでトラックが正面衝突をしてきた。お母さんは私を庇うように抱きしめて、結局私だけが生き残ってしまった。

毎日毎日泣き続けていた。両親が恋しくて。おばあちゃんに引き取られてからも、ずっと泣いていた。

そんな泣いてばかりいた私におばあちゃんは愛情を沢山注いでくれて、大丈夫大丈夫と何度も繰り返した。それでも寂しくって仕方がなかった。

でも泣いてばかりいる私にある日おばあちゃんが言ってくれたんだ。笑っていると幸せがあっちからやって来るんだよ。と。逆に泣いてばかり居たら目の前の幸せを逃していってしまうんだって。

可愛いひなたには涙は似合わないよって。

私はおばあちゃんの言いつけをずっと守っている。1年前に病気でおばあちゃんが亡くなって、東京に出てきた。

夢とか野望は特別無かったけれど、平凡な幸せが欲しかった。天涯孤独になってしまった私の、家族になってくれる人を探していた。

私を産んでくれて育ててくれた家族は失ってしまったけれど、家族は大人になってから自分でも作れる。そして家族になった人にはめいっぱい幸せをあげて、いつでも笑いの絶えない家庭を作りたいと決めたんだ。
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