【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
怪しい人と、樹くんが言い終わる時二人の視線が同時にこちらへ向く。よくよく見れば端正な顔立ちも大きな瞳もそっくりだ。
まさか…まさか…まさか…。
そっと少年をその場に降ろすと、樹くんはまじまじと私の顔を見る。そしてサーっと青ざめた顔をして驚きの声を上げた。
「な、永瀬ひなた?!何故君がここに居る!」
「あ、ははぁ~…。だからラインで送ったじゃないですかぁ。待っていると…。」
「しかし何故陽向と」
「ひなた?」
不思議そうな顔をして、少年は樹くんの手をぎゅっと握りしめて上を向いた。
「お父さん、この馬鹿そうな女と知り合いなの?
こいつ僕とおんなじ名前なんだって、ひなた。」
「あ、はは…知り合い…知り合いと言えば知り合いだなぁ。はは…」
「僕こんな馬鹿そうな女と同じ名前嫌だ。」
さらりと失礼な事を言うクソガキ。さっきまで同情したのが馬鹿らしい。
けれども今はそんな事は関係なく、目の前の事実が受け入れられない。
「あ、あの…」
ふぅっと樹くんは大きなため息を吐いて、頭を抱えだしてしまった。
そして私へと観念したようにはっきりと告げた。
「この子は小鳥遊 陽向。正真正銘俺の息子だ。」
何かが足元から崩れ落ちていく音が聴こえた。
無表情でクールな表情の中に、柔らかく優しい笑顔を持った彼。
そんな彼に一目惚れした。 一緒に一夜を過ごし、妖艶な彼の姿を見て、もっともっと好きになった。
恋に落ちたら最後。当たって砕けろ。愛はパワーで地球を救う。
けれどまさか彼が子持ちだったなんて…。そんな運命、聞いてない!!