【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「一人で行くのは重いわよ。私も一緒に」
「だいじょーぶ、だいじょーぶです!先に休憩入っちゃってください!私ゴミ出してから入りますから」
「いいの~?本当にひなたちゃんは良い子で働き者ねぇ」
「あはは、んな事ねーっす!
いっつもドジで迷惑ばかり掛けちゃってるから!」
カートに大きなゴミを乗せてよそ見をしながらオフィス内を走り出すと、さっそく人にぶつかってしまった。
スーツ姿の若い男性は、迷惑そうな顔をしてこっちを見やりぶつかった肩をサッと払う。ごめんなさい。と何度言っても無視されてさらりとその場を離れてしまった。
同僚のおばちゃんは呆れながらその様子を見守っていた。
鼻歌を歌いながら外に出ると、重そうな買い物袋を手にした初老のおばあちゃんの姿が目に入った。
一旦その場でカートを置いて、そのおばあちゃんの元へ駆け寄った。 その姿は1年前に亡くなった祖母の姿と重なって見えた。
「おばあちゃん、大丈夫?」
声を掛けると皺だらけの眼を細めてこちらを見つめる。 スクランブル交差点にはお昼時のせいか人が溢れかえっている。
おばあちゃんの手から重そうな袋を手にもつと「あらあら」とこちらへ笑いかける。
「一緒に信号渡ろう。荷物は私が持つから」
「いいの?ごめんなさいね。
私少し腰が悪くって」
「いいよ。ゆっくりでいいからね。一緒に行こう」