【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
荷物を貰って信号を一緒に渡ったらおばあちゃんは何度も私にお礼を言って、りんごを一つ持たせてくれた。
見えなくなるまで手を振っていたら、何度もこちらを向いてぺこぺこと頭を下げる。
「すいませーん」
「はい?!」
「ここに行きたいんですけれど、どっちに行ったらいいか分かんなくって」
今度は地図を持っているおばさんに話を掛けられた。
ここからは10分程度のレストランだった。なので、その場所まで案内する事になる。
昔から人によく道を尋ねられる。なのでこういった事態は慣れっこである。
「どうもありがとう。あなた親切ね。」
「いえいえ~9月になったとはいえまだ暑いですから気をつけてくださいねぇ~」
そんなこんなをしていたら、休憩時間は残り30分になってしまった。
つーか私ゴミも放置していたんだ。急いで戻らねば。ダッシュで駆け出したら、制服の裾がぐいっと引っ張られた。
「ん?」
「おい」
下から生意気な声が聴こえて来たかと思えば、そこに居たのは制服を着たチビひなただった。
身を屈めてチビひなたに目線を合わせると、「馬鹿か。お前は」といきなり悪態をつかれた。
久しぶりに会ったかと思えば、生意気な口の利き方だ。やっぱり親の顔が見たいものだ。あ…樹くんか。