【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
あーはいはい。そうか。そりゃあ悪ぅござんした。しかしまた樹くんに用事でなかったら何故こんな所までやって来たんだ。
生意気な口調だったが、チビひなたはちょっぴり背伸びをして私へと顔を近づける。
嬉しそうに瞳を輝かせて「この間もテストが100点で、お父さんが新しいゲームのソフトを買ってくれたんだ」と嬉しそうに自慢してきた。
「へー、そりゃ良かったじゃん。」
「それでいつ来る?」
「は?」
「ゲームだよ。ゲームやりに、いつ来る?」
黒い大きな目を輝かせながら、チビひなたは言った。
その言葉にハッとしてしまった。 「また、一緒にゲームしてくれる?」 あの夜、寝る前にチビひなたが私へ訊ねて来た事。
適当にいいよと返事をした。まさかこの子、あの時の約束ともいえない約束を覚えていた…の?
子供の純粋さにはどこまでも頭が上がらない。
けれど私がその約束をすっかりと忘れていたのを察してか、気まずそうに下を向いてしまった。 瞬間傷つけてしまったと分かった。
「チビひなた。ごめんね。私はあの家にはそう簡単に行けないんだ。」
「何で?」
何でって。だって樹くんと私は恋人でもなんでもないし、ただの私の片思いだし
平気で家を行き来出来る仲ではない。 けれど、小生意気な子供が純粋な眼差しを真っ直ぐに向けるのを見て、何であんな適当な約束をしてしまったんだと後悔し始めた。