【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「あのお家は、チビひなたとお父さんとお母さんのお家でしょう?
だから私はあんまり行かない方がいいと思うんだ。」
「でもゲーム一緒にするって…
それにナオだってユウキだって僕んちに遊びに来るよ?」
捨てられた子猫の様な傷ついた瞳は、胸をズキズキと痛ませる。
「それはチビひなたのお友達でしょう?私とあんたは友達じゃないからね」
そこまで言ったらツンと横を向いてしまった。
「僕だって別にお前を友達だとは思っていない。
これ捨てておけよ。お前ゴミを掃除するのが仕事なんだろう?
じゃあな。家庭教師の時間が始まる前に帰らなきゃ。」
ぐちゃぐちゃになった紙切れを私へと押し付けて、チビひなたはとぼとぼと歩き出してしまった。
傷つけてしまった。
友達だよ、と言うべきだったのだろうか。けれどそう言ってしまったら、きっとあの子は私とゲームをする為にいつまでだって待っていてくれている。
子供の生意気さの中に隠された純粋さはいつだって痛い。
無責任な事を言って、出来もしない約束をしてまたあの子を傷つける事になったら…そう考えると追いかける事も出来なかった。