【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
くるりと椅子を回して、ガラスに手をつけてジーっとその姿を見つめる。
ふぇーすごー…。この人達皆樹くんの部下なんだよねぇ? やっぱりかっこいい!
オフィスの中央には大きな木のオブジェがある。 あれって本物かな?
このビルの清掃は手慣れたものであったけれど、こうやってオフィスに入るのは初めての事だった。
「あのー…」
「はひぃ!」
思わず間抜けな返事。
目の前の彼女はちらちらと私の青の作業着を見ている。
不思議がるのも仕方がない。どう見てもそこら辺にいる清掃員。社員さんからしたら「何だこいつ」って感じだよね。
「私、夏村季穂と申します。
一応スターサンフラワーの立ち上げの頃から居る従業員です」
「そぉなんですか?!
私は永瀬ひなたと申します!
ここのビルの清掃のお仕事をしていますッ」
「ひなた…?」
夏村さんは長い睫毛をぱちぱちと瞬かせる。
わー、睫毛ながぁーい。まつエクかなぁ?どこのお店に行っているんだろう?
「はい、平仮名でひなたですッ。夏村さんはサンフラワー立ち上げの頃から居るって事は、樹くんとは長い付き合いって事ですよね?」
「樹くん?」
私が彼をそう呼んだら、彼女は少し怪訝そうな顔をして眉をひそめた。
あッ…やっぱりまずい?自社の社長だもんね。ついつい樹くんって呼んじゃったよ。