【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「あ…小鳥遊社長様を…」
「小鳥遊社長様って。ふ、くすくす。面白い女の子ね、永瀬さんって。
私は樹とは学生時代からの同級生なの。 だからこんな大きなオフィスを構える前からずっと一緒に仕事をしてきたの。
彼にとっては相方って感じかしらね?」
そんな長い付き合いなんだ。
学生時代の同級生って事は…。
「夏村さんって樹くんと同級生なんですか?!」
「ええ、31歳になるわね」
びっくり。目の前に居る彼女は若々しくて綺麗で、とても30過ぎには見えやしない。
確かに綺麗な人ではあるのだが、身なりにも気を遣っていて、指先の淡いピンク色の先端についている控えめなストーンも素敵だった。
「全然見えないですね!どこでまつエクつけてるんですか?」
「ま、まつエク?まつエクなんかつけてないけれど」
「え?!じゃあ自睫毛?すっごいながーい、綺麗ー!
綺麗な人はどのパーツを取っても恵まれているものなんですねえ!」
「ふふ。」
私も30歳を過ぎたら自然にこんなに素敵な大人の女性になれるのだろうか。
いや…そこは無理だろう。きっと人間の出来って奴が違うに違いない。
…それにしても学生時代からの知り合いならば、樹くんが結婚していた事も、チビひなたの存在も知っているのだろうか?知らない訳ないよね。だってずっと一緒の会社で働いて来たんだから。
「永瀬さんは樹とは一体どんな関係…」彼女がそう言いかけた時、ガラス張りの扉が大きな音を立てて開けられた。