【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

「あぁ…。そうなのね。
一色さんと打ち合わせしておきます。」

「すまない。よろしく頼む」

樹くんは夏村さんへと視線を落としたが、直ぐにふいっと逸らす。

そして私の首根っこを再び掴み、会議室から出て行こうとする。 掴まれながらも、夏村さんを見つめていた。

彼女はもう私とは目を合わせてはくれなかった。…もしかして、あの人。

これは、ただの女の勘だ。しかし恋愛体質の私の勘は、恋愛の事だけに関してはかなり自信がある。

社長室。つまりは樹くんの仕事をする職場。

共有オフィスの方は観葉植物もずらっと並び、お洒落で近代的な華やかなオフィスだったけれど、社長室は意外にも小ぢんまりしていた。

きちんと整頓された大きな棚には資料らしき物が几帳面にもびっちりと並んでいたけれど、シンプルなディスクの上にはパソコンはぽつんと置かれている。

そんなシンプルなオフィスをただ一つ彩っていたのは、大きな窓の横に置かれたたった一輪の向日葵だけだった。

窓から差し込む日差しを浴びて、空を見つめていた。

「意外にもシンプルな社長室ですねぇ~ッ」

「散らかってるのは嫌いでね。」

「へ~、あんなにお家の方は散らかってらっしゃるのにぃ~」

その言葉に樹くんはこちらをじろりと睨む。 あぁ…その挑発的な瞳も素敵…。

「家は片付けている時間が余りない。家政婦を雇おうにも陽向は他人が家に入るのが嫌いなんだ」

「成る程~。
それにしても綺麗な人ですね、夏村さん」

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