【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
何故私は大好きな樹くんと言い合いをしなくてはいけないのだろう。
チビひなたの為なんかに…。
お互い立ち上がって、肩で息をしながらの言い合い。
大好きな彼の前では可愛い女で居たいのに…彼の子供なんて私にとって…関係ない事で。
寧ろ心配したり仲良くしたりする対象なんかじゃないのに。
ハァ、と小さく息を漏らした彼は再び椅子に座り、窓の方をくるりと向いてしまった。
窓の横で風に揺れて、太陽を見つめる向日葵がそよそよと気持ちが良さそう。樹くんは花弁を指で弄って、もう私の話は聞いてくれなさそうだった。
穏やかで優しい人かと思えば、意外に激情家で怒りっぽい所もある。
自分の立場を重んじるのは、全部チビひなたの為だった。樹くんの愛情を一心に受けているのはチビひなた。けれどそれが幼すぎるあの子には伝わっているだろうか?
私は小さな頃、おばあちゃんの愛情を素直に受け取れなかった。
皆の両親より歳を取っているおばあちゃんは、親子行事に来た時偉く目立っていた。 嬉しかったのに、周りの子にからかわれてちょっぴり恥ずかしくって。
学校の行事には来なくていいと酷い事も言った事がある。それを後悔するのは、いつだって後からだった。
7歳のチビひなたは今この瞬間しかいない。 互いに後悔や悲しい想いをさせたくない。