【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「とにかく私は行きますから!」
「阿保か、お前!保護者でもない君が学校に入れるか!」
樹くんの言葉を聞かずに、部屋を飛び出した。
ひぃぃぃぃぃいい。喧嘩しちゃったよぉおおお。怒らせちゃったよぉぉぉおお。
どうして私がチビひなたの為に樹くんと喧嘩しなくっちゃいけないの?もしかしてここで怒らせたから、来週の動物園デートは無し?
そんなの嫌だよー。
涙目になりながら、樹くんの会社のオフィスを後にしようとする、と。
「永瀬さん…!」
とぼとぼと歩く私を引き止めたのは、夏村さんだった。
「ふぇー…ああ、夏村さん。どぉも部外者がお邪魔しましたぁ~…」
「樹と何かあった…?」
樹。呼び捨てにする彼女。やっぱり親しそう。そりゃあ学生時代の同級生ならば長い付き合いだ。
樹くんは奥さんの親友だって言っていた。 でも…絶対にこの人樹くんの事が好きだと思う。彼の言う通り愛とか恋の事ばかりしか考えていないからよぉーく分かる。
「恋って難しいですねぇ…」
「永瀬さんは、樹が好きなの?」
「好きです。超超超大好きですッ!」
余りの気迫だったか、夏村さんは美しい顔を歪ませてドン引きしていた。
さっきまで優しく笑ってくれていたけれど’好き’と言う言葉を口にしちゃったら、夏村さんは少しだけ厳しい顔をこちらへ向けた…気がする。