【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
何故かいたたまれない気持ちになってぺこぺこ頭を下げる私。一体何やってんだか…。
てゆーか、こんな綺麗な人が側に居て、そこでも恋愛にならないんだったら私の事なんて相手にしてくれる訳ないよなぁ。キラキラとラメの光る夏村さんの唇を見つめながら思った。
「素直に言うのね…」
「あはは~素直だけが取り柄っていうか~」
「でも樹の事は諦めた方がいいわ。
あの人はどんなに女性と遊んでも、忘れられない人が居るから。
誰にも振り向かないわ」
「それって…亡くなった奥さんの事ですかぁ…?」
伏せていた瞳をこちらへ上げて大きく瞬きをする。
「樹があなたに言ったの?」
「樹くんから聞いたというよりチビひなたがぁ~…」
「チビひなたって…。陽向くんにも会っているの?あなたは」
「まあ、色々とありまして。」
夏村さんは長い前髪をかき上げて、視線を上に上げた。
「事情を知っていると言うのならばなおさら諦めるべきよ。
社長室に飾ってあった向日葵みた?この会社の名前もサンフラワー…
向日葵…亡くなった樹の奥さんの名前ね。 私は学生時代から二人が付き合っているのをずっと見てきているの。
樹が本気で好きになれるのは、向日葵だけ。 そしてあの子が残した宝物である陽向くんだけ。
あなたのように樹のお金目当てだったり、好きだと迫って来る女の子は沢山見て来たわ。だけど、駄目なの。樹はもう誰も好きにならない。」
そう言った夏村さんの瞳は切なげだった。