【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー

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数日後。
金曜日のシフトをパートのおばちゃんに言って、午後と午前変わって貰う事に成功した。

しかし潜入方法は浮かばないまま。 樹くんにしつこくメッセージを送ったけれど、全部スルーされた。 喧嘩をした仕返しという訳なのだろうか。意外に子供ぽい所もあって可愛い…じゃなくって!

このままじゃあ来週の動物園デートも無かった事にされそうだ。

「はぁーーーーはぁーーーーはぁーーーー」

その日の夜マーメイドまでバイトにやって来た私は珍しくため息ばかり吐いていた。

「ひなたちゃん、今日は元気ないね?」

店長が心配そうに声を掛けてくる。

「ひなたちゃんが元気ない日なんてないから珍しいね」

「ほへー、そーですかねー」

「人の話聞いてないでしょう?」

「あ、5番テーブル片付けてきまっす!」

「グラス割らないようにねぇ?!」

そう言った5分後。パリンとガラスのぶつかり合う涼しい音が店内に響いた。

「きゃあぁぁああ!申し訳ありませぇん!!」

マーメイドは会員制のクラブ。白を基調とした上品で品のあるラグジュアリーな空間。

お客様を接待するテーブルやソファーまでもが白で統一されていて、真ん中にはおっきな噴水がある。

演出にまで凝っていて、たいまつに火が上がっていたり、青く照らされた水槽の中では色とりどりの熱帯魚が優雅に泳ぐ。

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