【完】#ただいま溺愛拡散中ー あなたのお嫁さん希望!ー
「ひなたちゃん、こっちにおいで」
優しく声を掛けてこちらへ手招きするのは、前坂社長であった。
私の友人のかおるちゃんを指名している、社長さんだ。 前坂社長の横でかおるちゃんは「馬鹿」と口パクで言っていた。
「前坂社長お久しぶりです!お邪魔しますッ」
「あはは、ひなたちゃん今日も元気にグラス割ってるね!」
「笑いごとじゃないんですよぉーッ。店長意地悪だから、これ以上割るようだったら給料から天引きするって!
酷くないですかー?!ただでさえ給料少ないのに!」
「ひなたが悪いんでしょう?どうせまた考え事していたんでしょう」
「まあまあかおるちゃん。ひなたちゃんも一緒に呑もう。好きな物頼んでいいよ?」
「本当ですかぁー!
お願いしまーす!メロンソーダで!あ、アイスも乗っけて下さいッ。真っ赤なさくらんぼも!」
「子供かよ。あんたはさー目の前にシャンパンが空いてるって分かってて私の売り上げに協力する気はないわけ?」
「あはは、ひなたちゃんはそういう所が可愛いんだから」
「前坂社長お優しい…」
メロンソーダーアイス乗せ。そんなメニューは高級クラブには、無い。
これは私専用のドリンクメニューだ。
こうやって仲の良いお客様や、声を掛けられたお客さんの席についていい決まりになっている。
私は女の子に珍しいウェイターだったので、こうやって声を掛けられる確率は高い。