青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「今日はありがとうね、みやびちゃん。今度は家にも遊びに来てね」
食事をしながら話しているうちに、自然とお母様は〝みやびちゃん〟呼びに変わった。
その事が嬉しくもあり、寂しくもある。
あずきやを出て解散となった今も、家に遊びに来てねと仰ってくれた。
恋人のフリ。その事実が、お母様の好意を踏みにじっている。
お父様とお母様が並んで車に乗り込むのを見送りながら、私達も地下駐車場にとめた車へ向かう。
おふたりとも楽しい方だったし、培ってきた所作やマナーは十分に出来たはず。
とはいえ常に緊張感は抜けなかったので、外の空気に触れ、深く息をつく。
「ほんと、ありがとな。疲れただろ、帰りの車は寝ていいから」
「さすがに寝ませんよ!」
「遠慮はいらない」
「え、遠慮じゃなくて、だから、その…」
寝たらテンちゃんに寝顔見られるじゃないですか…!
そんな恥ずかしいとこ、見せられませんよ!
私は言い淀んだけど、テンちゃんはくすくす笑っている。
これは、分かっていて言ってるな。
私の寝顔をみて誰が得するというのか。