青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「最高のキス、してやるよ」
ズキュン。私の胸に彼の言葉が刺さる音が、響いた。
耳元で囁き、テンちゃんはニッと口角を上げた。
「乗ります」
そのまま彼は私の手を引いて、係員さんにチケットを提示した。
「どうぞ、ごゆっくり〜〜!」
赤いゴンドラに向き合う形で座った私たちは、満面の笑みの係員さんの元気な言葉に見送られる。
き、緊張する…。この密室に二人きりなんて………。
自分で誘っておきながら、さっきからテンちゃんの顔を見れない。
手で顔を覆って悶えていると、ゴンドラがぐらりと揺れた。
何かと思えば、テンちゃんが至近距離に近づいて……!
「それじゃあキスできないだろ」
彼はそう言うと、まんまと私の手を退けた。
「ほら、外見ろよ。」と言われてみて初めて気がつく。
ゴンドラから見下ろせる、遊園地一帯とその先の東京の街に。
月明かりに照らされ、きらきらと輝く街は、ロマンチックと言い表すのがピッタリだ。
遊園地のちょうど真ん中に、大きなハートと『LOVE』の文字が目に飛び込んでくる。
そこで写真をとる複数の男女が、段々と小さくなっていく。
てっぺんに近づいている証拠だ。
「綺麗……」
私の呟きに、彼も頷いた。
テンちゃんは目を細めて、私と同じように景色を眺めている。
彼の横顔は、光り輝く目下の景色に照らされ、淡く色付いていた。