青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
…けどもまあ、そんな余裕私にはなく、ただただ浪川に怯えることしかできない。
「久しぶりだねぇ~みやびちゃん。会えて嬉しいよ。」
私はちっとも嬉しくない。
久しぶりなのは確かだが、こっちはこいつの顔なんぞ見たくもなかった。
そしてその気持ち悪い声も聞きたくなかった。
どうして今になって出てくるの。
呑気に真っ暗な路を一人で歩いちゃうくらいには油断してたのよ!
「みやびは俺のものなのに、いつも一緒にいる男、ベリーヒルズビレッジの総合病院の跡継ぎなんだろ?
あんな若いくせに生意気だよなぁ~。俺の可愛い可愛いみやびまでとりやがってよぉ」
いつも一緒にいる男って、テンちゃんのこと?なんで知ってるの?完璧ストーカー……!
ていうか、テンちゃんが総合病院の跡継ぎ?
…私はあんたのものじゃない!
恐怖で縮こまる体とは裏腹に、心のなかでは突っ込みがやまない。
ふと目に入った時計は、十八時半を指していた。待ち合わせの時間だ…。
なんとか、ここから逃げられないかと辺りを見回しても、暗くてよく見えない。
もう、ここどこ!?
「さーて。やっと俺のところに来てくれたみやびと、何をしようかなぁ」
「…っ!?……や、や…めて……っ」
急に浪川の顔つきが変わった。
ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべると同時に、今にも襲いかかってきそうな鋭い視線を浴びせてくる。
心のなかで突っ込む余裕すらなくなってしまった私は、胸元に伸びてくる生暖かい手から遠ざかることで精一杯。
一気に過去の光景がフラッシュバックする。
オフィスでこいつと二人きりの時も、こんな風に手が、私の体を舐めまわすように触れてきて―――