青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
帰りたいのは山々だ。一刻も早くこの場を去りたいところだけど、仕事を放り出すのは気が引ける。
「こんなとこいたくないだろ。今日はもう帰ろう。どうせ全部キツネジジイに押し付けられた仕事だろ」
もうテンちゃん、仰る通り。何一つ間違ってません。
私は頷いて、よたよたと立ち上がった。
廊下にでると、ちょうど昼休憩から戻ってきた社員の視線が刺さる。
目が真っ赤に腫れた私を支えながら歩く
超絶イケメン王子。
こんな光景、摩訶不思議よね。うん。
少し歩調を速めて顔をあげると、テンちゃんは苦笑いで私を見下ろしていた。
マンションまでやってくると、私がオートロックを解除し、彼が持っていた鍵で部屋を開け、中に入った。
テンちゃんは何か言いたげな顔で私を見つめたまま玄関先で突っ立っている。