青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
正午を回った頃、昼休憩にしようかと考えていると突然医局がざわついた。皆の視線を辿ると、入口に見慣れた人物が立っている。
俺より五センチ身長の低い男、兄の天ヶ嶋蒼良(あまがしまそら)。
彼はこちらに手招きをしている。
わざわざこんな所まで押しかけてくるなんて、何があったというのか。頼むからトラブルはやめてくれと願いつつ兄の方へ行くと、開口一番恐れていた言葉を放った。
「まずいぞ。今日な、例のアイツの会社近くにレストランオープンしたんだ。それはそれはOLに優しいレストラン」
例のアイツ、という単語がなければ追い返す内容だったが、俺の中に嫌な想像が膨らむ。
「おそらく、昼休憩で誰かしら犠牲者がでる。皆逃げるようにそのレストラン行くはずだけど、一人捕まると思っている。…一番可能性があるのは……」
鳥飼みやび。
他に思い当たらなかった。
彼女本人は気づいていないようだが、パワハラは彼女に集中したものだ。
誰もいないオフィスで二人きりともなれば、童顔好きのキツネジジイは必ず問題を起こすに違いない。