青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~



ロッカールームに走り込み今までにないスピードで着替えを済ませ、兄と共に病院を飛び出した。


――――――


案の定、鳥飼みやびは浪川の餌食となっていて、彼女は涙を流して静かに耐えている。
後ろからそっと近づき、浪川の制圧を兄に任せ、彼女をそっと抱きしめると、しがみついて思い切り泣き出した。

こいつは多分、この半年間、涙ひとつ零さず耐えてきた。
童顔の自分がまさかセクハラを受けるとは思っていなかったんだろう。

よりによって浪川のやろうは、その童顔好きなのだ。


昨晩ぶりの彼女は泣き腫らした瞳で、俺の心配をした。

こんな時まで人の心配とは、人が良すぎるんじゃないかと逆に心配になる。



彼女をマンションまで送り届けて俺は思案する。

正直なところ、今の今で家に一人置いておくのはなんとも心もとないが、彼女は笑顔で「行け!」と俺を追い出した。

ぱっちり二重の瞳の奥は揺れていて、本当は不安で仕方ないだろうに、患者が待ってるだろと送り出してくれた。




鍵を閉めろ、何かあったら電話しろと言い残し、マンションを後にした。

本日二度目であった。




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