青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
さすがに落ち着こうと、一旦フローリングに座って深呼吸する。
はぁ。デートって訳じゃないし、買い出しに行くだけなのに、緊張で手が震えてくる。
そして九時五十六分。
ピンポーン――
軽快な音が部屋に響いた。
どっくんどっくんと波打つ心臓に手をやりモニター付きインターホンを覗くと、画面越しでもカッコイイテンちゃんがいた。
はい、と返事をしてヒールをはき、部屋を出る。
エントランスの外に、片手をコートのポケットにツッコミ壁にもたれ掛かるテンちゃんを見つける。
「お、おはようございます、お待たせしました。」
「……お、おう」
自動ドアを抜けて彼の元へ行くと、なぜだか目が泳いでいる。
どうしたんですか?と聞く前に、テンちゃんは歩き出してしまった。
カジュアルなコーデで、青いスクラブ姿とはまた違った魅力をさらしだしている。
あぁ、やっぱりカッコイイです。テンちゃん!
もう、おなかいっぱいですよ…。
ラーメンを食べに行った時と、助けに来てくれた時に私服は見ているけれど、なんだか今日のはその時々よりも美しい。
彼にキラキラが降り注いでいるようで見惚れていると、「なんだよ」と振り返った。
口調は照れ隠しなのか尖っていたけれど、その頬が少し火照っていたのを見逃さなかった。