青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「やっぱり混んでるな」
最寄り駅のホームは、平日だというのに混んでいた。
中には中年男性もいて、浪川部長ではないとわかっていても、すれ違う度にビクッと肩を震わせてしまう。
一人ため息をつくと、不意に右手が暖かくなった。
テンちゃんが私の手をとり、自分のコートのポケットにそれごと突っ込んだ…!
な、なになに、なに!
これじゃ、な、仲睦まじいカップルみたい!
それだけではとどまらず、半人分ほど間があった距離をぎゅっと縮められ、お互いの肩がピッタリくっついた。
その際、テンちゃんは「大丈夫だよ」と耳元で呟いたから、私が中年男性を気にしているのに気がついての行動だったらしい。
そんなさりげない優しさが嬉しくて、私はくっついた肩を離すことなく電車に乗り込んだ。