青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
席が二席だけ空いていたけど、両隣が男性だったので躊躇っていると、テンちゃんは当たり前のように席には座らず、降り口の扉付近でとまった。
「て、テンちゃん、座らないんですか?」
立っているのは私だけでいいから、テンちゃんには座って欲しい。
そう思ったけど、「あそこのばーさんに譲る。一駅くらい俺は大丈夫だ。男だぞ」
少々口は悪いけど、テンちゃんが言うおばあさんは隣の車両に乗っているし、この車両の席が空いているなんて知らないだろう。
なんでも汲み取って先回りし、私が言うより前には既に行動している。
テンちゃん…好きだなぁ。
……ん?好き?好き……?
いや違う、違うよ、人として、だよね。うん、そうだよね?
あれ?
何の気なしに感じた感情に、違和感を覚える。
なんかこう、前みたいに憧れ、カッコイイ、癒し〜!っていうか、好きだなぁみたいな。
胸のあたりがほわほわ暖かくなって、心が穏やかになる。
なんとなく今までと違う感情な気がしたけど、きっとテンちゃんの中身を知ったから、そう、人間として、好きなんだと、そういうことにしておいた。