青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「いーなー!どこで知り合ったのあんなイケメン!ね、ね、今度紹介してよ!私今絶賛婚活中なの!」
モヤッ……
モヤッてなに!
じゃなくて、婚活中の彼女に王子を紹介したら、し、したら、そのまま…け、結婚……とか、するかも…だよね。
あれ、嫌だ。嫌だ。結婚、して欲しくない…っておかしいな。あれ?
「鳥飼さん聞いてる?」
「あ、うん聞いてる。えっと…王子…………彼女、いるみたい」
え?彼女いるみたいって言った?言ったね?
嘘、ついちゃった……。
あ、でも本当に彼女いるかもしれない…けど彼女アリで私なんかと出かけたりしていたら大問題…よね。
咄嗟に出てしまった言葉は、頭の中で波紋のように広がる。
ちがう、ごめん違うよ。今は彼女いないみたい。予定聞いて、紹介するね。
そう言えば、まだ間に合うかもしれないのに、ストッパーがかかったように口が動かない。
最低な嘘だよこれは。だめだよ、こんなの。
「そっか〜、まぁそうよね。あんなイケメン、彼女いないほうがおかしいもん。仕方ない、他をあたるか」
肩を落とす遠井さんに、罪悪感が募る。
なんで、どうしてあんなこと言ったの。
ごめんなさい、遠井さん。
自分がわからない。
ただ、チクチクとかモヤッとか、ほわほわ、どっきどきのバックバク、寂しい、物足りないとか。
感情がおかしいのは確かで。
憧れ、尊い、王子…。それだけではない気がしてならない。
この気持ちがなんなのか確かめるために、旅に出ようかと考えるくらい、私の頭の中はごちゃごちゃしていた。