青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
キスをされた。
恋人でもない人とキスをするなんて、こんなこと現実にあるのね。
目の前の彼は、なんでもないように私が選んだ紅茶を淹れている。
さっきのキスは、夢?幻?私の妄想?
確かに唇がふれあったはずだと、人差し指で唇に触れてみる。
テンちゃんの態度が平然すぎて、わからない。
「そんなとこ触ってると、もう一回するよ?」
お湯を注いだカップから視線をこちらに向け、意味ありげな笑みを浮かべる。
やっぱり、夢でも幻でも妄想でもなかったみたい。
私は慌てて口を庇うように手で覆い、捲し立てる。
「どうして、き…キスなんか、したんですか!」
「みやびが可愛かったから?」
可愛い、その単語が私に向けられたものだと思うと、抗議したいのに体は正直だ。
足先から頭のてっぺんまで、かあっと熱くなる。
「か、可愛いって思ったら、誰にでもキスするんですか…?」
これが恋人同士なら、素直に嬉しいと喜べる。
でも私たちは違う。
男の人は好きでもない人とキス…またはそれ以上のこともできると聞くし、雰囲気に流されたとも説明しづらい。
だって今、お湯を沸かしているだけだったんだよ?お世辞にも良い雰囲気とは言えなかったはず。
前者の可能性が高いと推測してしまうと、複雑な心境にもなる…よね……?