青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
女の勘と〝フリ〟
あれからテンちゃんは、私の妄想通りにエプロンを着用し、慣れた手つきでトマトのクリームパスタを作ってくれた。
それはもう絶品で、いつか私が作った具なし粥を思い出すと心が抉られた。
穴があったら入りたいとはこのことだと身をもって実感し、料理本を買ってもっと女を磨こうと固く決意した。
そして今日、よく晴れた日曜日、仕事が休みなので早速駅前の本屋に来てみた。
未だに中年男性を見ると警戒してしまうが、前よりかは警戒心は薄まったと思う。
恐怖で外に出なくなるのは良くないとテンちゃんが忠告をくれ、一緒に出かけてくれたおかげもあり、こうして一人でも街に出られていると思うと彼には感謝してもしきれない。
お礼も兼ねて帰りにてぃーのに寄って最高級の茶葉を購入しようと先の予定を決めつつ、ずらりと並ぶ料理本の見出しをひとつずつ見ていく。
テレビや雑誌なんかで紹介されていた有名なフレンチシェフの本や、時短レシピなどといった主婦向けの本。
それらの中で、ふと目に入ったのは…
『男性にウケる料理~男の胃袋を掴もう!』
それなりに時間はかけたい…だからといってフレンチ料理なんて大それたもの私に扱える気がしない。
表紙のお料理はオシャレで美味しそうだし、男の胃袋を掴む…これが今の私に最適なのでは?
お値段も易しくレパートリーも豊富そうだったので、テンちゃんの胃袋を掴むべく、私はレジの列に並んだ。