青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
本を購入したあと、せっかく駅前まで来たからと、サンドイッチが有名なお店でお昼をとり、てぃーのへ向かう。
駅構内を出てベリーヒルズビレッジの後方を通りかかると、グットタイミングと言うべきか間が悪いと言うべきか、なんにせよ絶妙なタイミングでテンちゃんが病院の裏口から出てきた。
お互いにあっ、と声を漏らしたところで、私は手に持っていたビニールの袋をさっと背中に隠す。
『男性にウケる料理~男の胃袋を掴もう!』
こんな本を買っただなんて、まさに胃袋を掴もうとしている本人に知られまい。
それを避けるために、わざわざ家から遠い駅前の本屋まで行ったのだから。
あからさまな態度にも関わらず、テンちゃんはこれといって気にしていない様子。
良かった……。
ほっと息をつき、当たり障りのない会話をする。
「お疲れ様です。お仕事、終わったんですか?」
「あぁ。みやびは、買い物?」
「はい。駅前まで行ってきました。テンちゃんも、買い物行くみたいですね」
彼が手に持つコンパクトなエコバックを見てくすっと笑いがこぼれる。
やっぱり、主婦みたいだなと。