青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
どちらからともなく歩き出し、自然と同じ方向に足が向く。
沈黙の中、私がどうしても思い出してしまうのは昨日のキスである。
少し顔を横に向ければ、私の唇に触れたそれが目に入る、どころか、彼の唇しか見えなくなるのだ。
横顔ですら綺麗なだけではなく色気を感じられる。
高い鼻と大きな瞳。
…薄い唇は本当に、私のと触れ合った…。
もう一度呪文のように頭の中で唱えると、途端に頬がぼっと熱くなる。
いけない。つい見惚れていたけど、危険だ。要注意よ。彼の唇は……。
ぱっと視線を前に戻すと、追い打ちをかけるように手が取られた。
「ドキドキする?」
彼はそう言いながらいたずらっぽい笑みを浮かべ、真っ赤な私をくすくすと笑う。
手を握られたことでさらに頬の赤みが増した私の鼓動は、ドキドキどころじゃ済まない。
テンちゃんの笑顔にやられて、壊れそうなほど激しく動いている。