青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
私のマンションの前を通り過ぎたところで、テンちゃんが立ち止まった。
「家、帰るんじゃないのか?」
「この先の、喫茶店に行くんです」
「ふーん。じゃ、俺も行く」
お、俺も行くって、なぜ!
そりゃまぁ、手は繋がれたままだし、もうしばらく繋いでいられるのは、う、嬉しいけどもね…。
「この手、離したくないしな」
テンちゃんが繋いだ手を掲げながら、なんとも眩しい笑顔を向けるものだから、
ばっくん、と、心臓が物凄い音を立てた。
ただただ紅潮するばかりの私を気にもせず、こんな小恥ずかしい台詞を幾度となく入れてくるテンちゃんって、確信犯、かな…。
「いらっしゃいませ〜。あ、みやびちゃん…と、え、え、えぇ……?」
私に続いててぃーのに入ってきたテンちゃんを見るなり、日に日に大きくなるお腹を抱えた花菜ちゃんは、これでもかと目を見開いた。
手は繋がれたままだったと、慌てて離そうとするのに、テンちゃんは何も言わず意地悪げに口角をあげるだけ。
逆に握る力を強めてきた。
「あらあらまぁまぁ。どうぞ、こちらへ!」
どこぞの近所の奥様かのような口調で、花菜ちゃんは含みのある笑顔を浮かべて二人席を案内してくれた。
向かい合って座るため、さすがに手を離してくれたけれど、私は人知れずぎょっとする。
て、手汗が……地味〜に………。