今日から不良王子と同居します。
彼と無言で顔を見合わせて目が合うと、ちょっと笑いかけてみた。


（またばあやに怒られちゃったね）


（でもまだ話したいな。）


そんな風に彼に目線だけで合図を送ってみた。


彼はわかっているのかわかっていないのか、曖昧にコクコク頷いてくれたけど。


「はい、音葉さん」


前に座っていた彼はフォークで刺した一切れのお肉を私の方へ向ける。


「え？」


「肉欲しいんじゃないの？」


あ、さっきの合図、全然通じていない。


でも彼のきょとんとする顔が可笑しくてプーって吹き出してしまった。


「やだ、違うったら。玲生くん」


「あれ、違った？」


「やだーもう」


「お嬢様っ」


「はい」


「食事中にお行儀が悪いですよ」


「はーい、ごめんなさい」


またばあやに怒られてしまったけど、なかなか笑いが収まらなくて。


私って笑い上戸って言うか、一旦ツボに入ってしまうと結構しつこく笑い続けてしまうみたい。


「ハハハ」


そんな私を見て彼も楽しそうに笑いだした。


「まあ、玲生お坊ちゃんまで」


結局その後はばあやに叱られて黙って食事することになったのだけど。
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