今日から不良王子と同居します。
一刻も早く、車を降りないと変な風に思われてしまう。


「うん、わかったよ音葉、ごめん、強引にして」


私が困っているのを察してくれた彼はすぐに優しく謝ってくれた。


「ううん」


ようやく、彼は私をその腕から解放してくれた。


「俺、音葉に嫌われたくなくて、今まで慎重に慎重にって思ってずっと我慢してた。
音葉はおれのこと幼なじみとしてしか見てないような気がして自信がなかった。
けど、もう俺だって手加減しない」


「手加減って?」


「なんとしても、あいつをこの邸から追い出す」


強い意志を秘めたようにそう言われ、びっくりした。


「そんなっ、どうしてそこまで」


「あいつは危険だから」


「そんなことないよ」


「ダメだ、この邸には君の父上もめったに帰ってはこれないようだし。これ以上、あいつの好き放題にはさせない」


「直政くんっ。そんなの」


そんなの横暴だよ。


いくら婚約者だからってうちの家のことにまで口出ししてくるなんて。


だけど、彼は本来そんな横暴な人じゃないはず。

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