今日から不良王子と同居します。
「こんなとこで寝てるから、てっきり襲ってほしいってアピールかと思ったんだけど」


「それは……違います」


「そうだろうね、音葉さんに限ってそんなことはないよね」


彼は半身を起こしてけだるげに肩をトントンと叩いている。


「いや、でも、まいったな。俺ってこんな奴じゃなかったのに。据え膳喰わずにいられないタイプだったんだけどな」


ひとりでブツブツぼやいている彼


「なに言ってるの?」


彼の言ってる意味が良く理解できなくて問いかけてみた。


すると、帰ってきたのは意外な方向からの答えで。


「俺、音葉さんには、簡単に触れられないんだ。どうしてかな……」


自分の手をじっと見ながら、しみじみ呟くものだから、こっちがびっくりする。


その顔がちょっと切なげに見えて胸がキュンとした。


「俺、音葉さんを大切にしたいのかな」


そう言って私の方を見るので、どう答えていいのかわからなかった。


「あ、うん。ありがとう」


わからないなりに、お礼の言葉が口をついて出る。

< 203 / 373 >

この作品をシェア

pagetop