今日から不良王子と同居します。
胸がドキドキしたけれど、頭は凄くクリアで冷静。


あの時とは明らかに違うって、思った。


玲生くんに抱き寄せられたときに感じたような、ドキドキとは別の心臓が爆発しそうなくらいのわけのわからない感情とは全く違っていて。


だけど、こんな比べるようなことをおもっている時点で、私の心はどうかしちゃっているんだろうか。


私って、最低だ。こんなこと今は考えちゃいけないのに。


髪を撫でられたから、そっと目を閉じた。


「音葉さん」


その時、背後から声がしてビクっと身体が震えた。


うそ、やだよ、こんな時に。


どうして?今こんなタイミングなの?


その声には聞き覚えがあって、振り返るのがすごく嫌だった。


だけど、おそるおそる声のした方を見たら、やっぱりそこにいたのは。


「玲生くん」


今しがた、学校から帰ってきたばかりの様子の玲生くんが私達の数メートル離れた場所で立ち尽くしていた。


凍り付いたような彼の表情に、一瞬で胸がわしづかみにされる。


「あ……」

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