今日から不良王子と同居します。
だって、君が望むことなら私は何でもかなえてあげたいから。


そのためなら私は……。


なんだって、差し出せる。


「音葉さん……そんなに簡単に俺にいいよって言ったらだめだよ」


彼は切なげにそう言って私の手を引き寄せた。


ごく自然に私は彼の腕の中に落ちていく。


抱きしめられた瞬間、夢のように幸福だと思った。


彼のぬくもりに包まれたら、やっぱり今だけは何も考えたくないと思った。


私、どうしちゃったんだろ。


なんだかおかしい。


さっき玲生くんが私と直政くんのことで焼きもちを妬いたって言われて、本当は胸がドキドキして少し嬉しいって思ってしまった。


彼を夢中で追いかけて決してひとりでは出ようとしなかった門を飛び出してきて。


今も彼に抱きしめられたら、こんなにも甘やかな気持ちになってる。


玲生くん、玲生くん。


ずっと傍にいて欲しい。どこにもいかないで欲しい。


婚約者がいるのにこんな気持ち、いけないことだってわかっているけど。


私はなんてズルくて最低なんだろう。
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