今日から不良王子と同居します。
「いたっていうか、家を出た後に出会ったって言うか。
でも、望みのない相手だから、俺が一方的に好きになっただけで。たぶん、告白したら困らせるだけだと思う」


落ち着いた口調の彼はあきらめているみたいにきっぱりと言った。


「そ、そう。だけど、玲生くんが少しでも家に戻ろうって気持ちになったんならいいことかもしれないよね」


「……」


その好きな人ってもしかして……。


ふと彼の好きな人って言うのが自分かもしれないなんて思ってしまう。


そんなの図々しいかな。
   

でもそう思うだけで、心臓が爆発するくらい暴れだす。


もしそうなら、どんなに嬉しいだろうって。


だけど同時に、もし本当に彼に想われていたとしたら、どんなにせつないだろうって。


だって、私にはその気持ちに応えることが出来ないんだから。


「……大切にしたい人だから。
彼女の守っている世界を壊したくないんだ」


彼は独り言のようにつぶやく。
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